鍼(はり)と灸(きゅう)と鍼灸院


鍼灸治療とは

一例としてですが筋肉の痛みはなぜ起こるのでしょうか。

筋肉は血液によって栄養や酸素が運ばれ、その後、その活動によって作り出された二酸化炭素や老廃物、または痛みを感じる発痛物質を回収して心臓に戻ってきます。

そこで「血液を浄化してまた筋肉に運ぶ」というサイクルを繰り返していくのです。

何らかの原因でこのサイクルが崩れた場合に、張りやコリ・だるさ・痛みを感じるのです。

この体のサイクルシステムのお助けマンが、鍼灸による刺激なのです。

古来から伝わる東洋の伝統医学の鍼灸(はり・きゅう)は主に4つの効果で自然治癒力を高めます。

西洋医学が、病気の原因である細菌やウィルスの根絶や、病気の原因となる部分(部位、患部)を取り除くことで、患部を回復させる治療をするというアプローチ方法であることに対して、東洋医学の鍼灸では病気は身体全体の免疫力が崩れていることから症状が発生していると考えます。

東洋医学は「身体の免疫力を高める」ことを主眼にしているのです。

そのため、人間本来の自然治癒力に作用させる治療をすれば、人間本来の身体の免疫力を取り戻すことができ、症状の回復や改善の効果が高まると考えられています。

4つの具体的な鍼灸の効果

①鎮静作用

痛みや異常興奮した筋肉等を、強い刺激を与えて鎮静させる作用です。
鍼刺激によって痛みを緩和することができ、患部への痛みの信号が遮断されることで痛みが軽減されると言われています。

②興奮作用

筋麻痺、神経麻痺などの機能減退症状に対して適度な刺激を与え、興奮させ正常に作用する方向に向かわせます。

③誘導作用

血液やリンパの流れが滞ったり、逆に良すぎる場合に、それぞれ刺激によって活性化や鎮静化させる作用です。
鍼治療によってリンパや血液のめぐりが改善されていきますので、筋肉をほぐす効果があります。

④反射作用

神経血管筋肉など、様々な部位に刺激を与えることにより、その部位ごとの反射作用を利用して症状の好転化を図るものです
リラックス作用のあるセロトニンの分泌が高まり、自律神経のバランスを整える効果があります。
交感神経と副交感神経のバランスを整えることで内臓のコントロールを図ることができます。

自然治癒力の向上や免疫力の向上につながり、体質改善も見込まれます。

お灸には上記の効果に加えて以下のような効果があります。

灸の作用

①造血作用

灸の温熱により、赤血球を増やし血流を改善します。

②止血作用

灸の温熱により血小板の働きを改善し治癒を促進します。

③強心作用

灸の温熱により白血球を増やし外敵からの防衛力を高めます。

世界保健機関(WHO)が認める鍼灸治療

現代では、鍼灸治療は世界保健機関(WHO)から様々な症状に効果があると認められている治療手法です。

歴史
鍼灸治療の歴史は長く深く、紀元前の中国ですでに鍼治療が広く流行していたという文献もあり、およそ2000年とい長い歴史のある伝統医学です。
その伝統医学が日本に伝わってきたのは奈良時代とされており、鍼灸の効果は江戸時代に庶民にも広がったとされています

科学的な裏付け
明治時代になりますと、政府の方針で西洋医学が推し進められ日本の鍼灸治療は下火となります。

しかし、国民の鍼灸の効果に対する支持は強く「鍼師」と「灸師」は国家資格として制定されるに至り、戦後には現代の「あん摩マッサージ指圧師、はり師きゅう師などに関する法律」の原型である法律も制定され、学会レベルで科学的な裏付けの研究も盛んになりました。

このような長い歴史も、鍼灸の効果が確かなものであるという証です。

東洋医学と西洋医学の病気に対するまたは治療のアプローチ方法は異なりますが、病気の根本的な原因を取り除く(改善させる)という目的は共通しておりますので、医学の分野では同じ医学でありながらも異なる領域として、症状や治療方法によって使い分けていくことが最善だと考えられています。

鍼灸の作用

鍼灸の効果が人体にどのように作用しているか、仕組みのメカニズムの詳細は、実は全てが明らかになっておりません。

しかし近年、学会レベルで科学的な裏付けの研究も盛んになったことで、鍼灸治療は臨床と研究が重ねられました。

そうして或る程度の作用の仕組みについては解明されつつあります。

主に、人体に下記の作用が働くことで、鍼灸の効果があらわれていると考えられています。

①生体機能調整作用

症状により、体の組織や器官の機能を回復させる作用が異なる働き方を起こすことが判明しています。

痙攣や疼痛は、鍼灸治療の鎮静作用により、器官のバランスが崩れている状態を整える働きをする
麻痺や痺れといった神経系や臓器の機能低下は、興奮作用を促すことで従来の働きに戻す

②血行促進作用

症状が起きている患部と健康な部分を分離することで、下記の作用が働くことが判明しています。

動脈硬化や酷い肩こり、筋肉痛等は、血管を拡張させることにより血行を促す働きが起きる
関節炎などの局所的な炎症は、患部に集まり炎症している血液を積極的に循環させることにより、炎症を鎮める作用が起こる
上記の鍼灸の作用と効果は、従来の「肩こり・腰痛」といったイメージの範囲に留まらず、自律神経失調症などの精神的疾患や婦人系疾患(生理痛の改善)や、慢性的な冷え性、便秘や下痢にも作用して、症状の改善が期待できるとされており、近年では脳梗塞や脳梗塞などの後遺症による半身麻痺などにも作用してリハビリ効果も認められています。

③免疫力の活性化作用

白血球を増加させることで生体防御機能が高まり、身体全体の免疫機能を活性化させる働きをすると考えられています。
血行促進作用により生体機能調整作用が高まり、癌や感染症にかかりにくい体質作りにもなると考えられています。